「え~っと…あの…、転校してきた瀬戸っス…。」
反応が全くない。冷たい目で無言を貫くクラスメイト達。
転校早々いじめ勃発というわけではない。これは当然の反応なのだった。
なぜなら、ここは女子校で、瀬戸雷は男子だったのだから…。
瀬戸雷のオヤジは、無駄に暑苦しい使命感を持った教育者だ。
「御國の基礎たる良き家庭を築く大和撫子を育てる」という信念に基づき秋華女学院を設立、理事長に就任した。
そんなおとんが、近頃悩んでいるのは、援助交際をはじめとする昨今の女学生のモラルの低下である。
秋華女学院はとくにレベルが低い学校ではないし、風紀も乱れているわけではない。
しかし少数ではあっても女生徒の中には、道を外れ、堕落していくものがいるのも事実であった。
大切な女子を親御さんから預かる学校の責任者として、パパンはこれを座視するわけにはいかなかった。
純粋培養の女子校の限界を悟ったお父様は、思い切った策を実行にうつす。
それは、男子生徒を一匹、学院の中に放り込んで、その影響を観察してみるというものだった。
女子校に男一人という事態は、傍から見る限り羨ましいことこの上ない。
しかし、その反面ただのモルモット以外のナニモノでもないという事実が伴っている。
そんなモルモットに理事長自ら選んだ人物は、何処かに収容されようが始末されようが全く惜しくないという、
不肖の息子「瀬戸雷」であった。
男友達からの羨望の眼差しと罵詈雑言の嵐を受けながら送り出された雷だったが、
前男未踏の夢の女の園は、転校の挨拶早々、不信と嫌悪の視線で熱烈歓迎してくれるのだった。
こうしてはじまった女子校生活だったが、クラスで嫌われているのは自分だけではないことに気づく雷。
代姫と名乗るその生徒は、可愛くて、成績が良くて、押しの弱い控えめな性格。
そりゃ狙われるわ、な女の子で…ん? 気弱で頭がよくて可愛くて? 代姫…?
小学校時代、ずっと同じクラスで隣りに住んでいた幼馴染…
可愛くて頭が良くて、でも泣き虫でいつもいじめられて、そのたびにかばってやった…代姫…代姫吹雪…
女子校にただひとりの男子生徒として入り込むというストーリーの選択肢式アダルトアドベンチャーゲーム。
この設定だといかにも男の妄想全開、ラッキースケベ展開かM向けに陰湿いじめられ展開が期待されますが、
あんまりこの舞台設定は生かされず、序盤の転校シーンが終わると各ヒロインのルートに入り、
そこからは普通に恋愛物と化します。
ただ、主人公の独白にネタが詰め込まれていて、かなり個性的なテキストとなっているのが特徴です。
シナリオ担当の天城遼はこの作品の次に「Rumble バンカラ夜叉姫」を書いています。
この作品は書店流通向けにゲームソフトではなく「CD-ROM付き書籍」として発売されました。
書籍にはあらすじ、キャラ紹介、サポート関連情報といった通常のマニュアルに相当する情報のほか、
攻略情報、原画、原画家による漫画、スタッフコラム、インタビューといった情報が収録されています。
通常別売りになるファンブックを最初からゲームにつけた形ですが、価格は2500円と低価格。