「やりてぇ~」
女の残していった匂いを全身に吸い込むと、俺は口の中でつぶやいた。
出張先の博多に向かうため、東京駅の新幹線ホームへ階段を駆け上がっていた時、
ひとりの女とぶつかりそうになった。女は抱えていたバックを落としたまま、
しばらくそのバックを見つめたまま動かなかった。
「だいじょうぶ?」俺は女に声をかける。
女はなにも答えなかった。答えない代わりに俺をキッと睨み、
そしてやっと、とても大事そうにバックに手を伸ばす。
結局、女は一言も口を開かず、バックを拾うと背中を向けて歩き出した。
その…俺を見た眼……。
その眼が俺の脳の奥深いトコロに突き刺さり、刺激し続ける。
「………やっぱ、やりてぇ~~~」
俺は、遠ざかってゆく女を引き戻す勢いで、もう一度残り香を深く吸い込んだ。
時刻は10時20分。新幹線はもうすぐ新横浜駅に到着するだろう。
その時、聞こえてくるアナウンス。
「全乗員乗客に告ぐ!この新幹線は我々によってジャックされた。
政府により要求が達成されるまで、君たちは人質となる!」
「え?なななんだ!?」俺は慌ててトイレから飛び出した。
ゴスッ!!
重い衝撃。誰かに衝突してしまったようだ。
「イテテテ……すいません、大丈夫ですか?」
見ると、そこには覆面の男が気絶している。
「これって……ジャック犯???」
俺は恐る恐るジャック犯の覆面をまくってみる。
その瞬間! 見開くジャック犯の目!!
「あっ!」と俺。「あっ!」とジャック犯の覆面男。
気がつくと、俺はジャック犯の顔にコブシを突き立てていた。
ジャック犯は俺の顔を見た…。俺もジャック犯の顔を見た…。
それが何を意味するのか、分かりきっている。
俺は覚悟を決めた。
ジャック犯を縛り上げ、覆面と銃を奪う。
あの女もこの新幹線に乗っている。
「殺られる前に…ヤるしかないっ!」
俺の野生が覆面によって目覚める。
このゲームはテロリストによってジャックされた新幹線を舞台にした、
アダルトアドベンチャーゲームです。
性欲を持て余していた主人公は、犯人の一人から奪った覆面を使い、
彼らの一員になりすまし、乗客の女性達に襲いかかります。
マウスでカーソルを動かしクリックするとその方向にキャラクターが移動します。
ゲームはリアルタイムで進行しているため、テロリスト達も車内を動き回ります。
入れ変わっていることがバレないように、立ち回りながら、
ターゲットとなる乗客に接触していきます。
正体がバレるか、発車から5時間54分経過してしまうとゲームオーバーとなります。
トイレ等、外から見えない場所に入ると、覆面姿に着替えることができます。
乗客としてのスーツ姿と、覆面とを状況によって使い分け、
テロリストの監視をかわしたり、他の乗客から情報を得たりします。