インストール
このゲームはハードディスク専用のゲームです。
インストールにはハードディスクの空き容量約16MB以上とMS-DOS3.3以降が必要です。
ゲームの起動にはメモリーのフリーエリアが560KB以上必要です。
インストールを実行するには、まずハードディスクから起動します。
「ディスクA」をドライブに挿入します。
A>B:
B>INSTALL A:
「ディスクA」を挿入したドライブに移動し、「ディスクA」内のインストールプログラム「INSTALL.COM」を実行します。
実行する際、インストール先のドライブ名を指定します。
A>CD PIXY
A>PIXY
インストール後、ゲームを起動するには「PIXY」ディレクトリの「PIXY.BAT」を実行します。
A>CD PIXY
A>MAKEBOOT
このゲーム専用の起動ディスクを作成するには「PIXY」ディレクトリの「MAKEBOOT.COM」を実行します。
起動ディスクとして使用するディスクをドライブに入れ、
システムのあるドライブとディスクをいれたドライブを指定し、「起動ディスクの作成開始」を選択しリターンキーで実行します。
作成が完了したら、このディスクをドライブにいれリセットすることでゲームが起動します。
コンピューター本体のBOOT装置がハードディスクドライブに固定されている場合は、
フロッピーディスクドライブから起動することが出来ませんので、本体の設定を変更してください。
操作方法
このゲームではマウスでの操作を基本としていますが、キーボードで操作することも出来ます。
マウスでの操作は、左クリックが決定、右クリックでキャンセルとなります。
キーボードでは、テンキー2468かカーソルキーで、カーソルを動かします。
リターンキー、スペースキー、Zキーがマウスの左クリックと同様の操作となり、
ESCキー、テンキー0、Xキーがマウスの右クリックと同じ操作となります。
SHIFTキーを押しながらだと、カーソルの移動速度を上げることができます。
ゲーム説明
特殊な装置を使い妖精界と人間界の間「薄明界」にアクセスし、妖精を育成するのがプレイヤーの役目です。
気温や水温、植物など環境を操作したり、個々の妖精にアイテムを使用することで妖精の成長をコントロールします。
それによって各シナリオの条件を達成していきます。
ゲームを始めると最初にシナリオ選択画面が表示されます。
4つのシナリオの中から選択します。カーソルを合わせて左クリックするとシナリオの説明が表示されます。
「OK」をクリックすることで、シナリオを開始します。「CANCEL」をクリックすることで選択に戻ります。
「LEVEL」はシナリオの難易度、「TIME」はシナリオの制限時間、「TYPE」はシナリオの種別です。
カード画面に移行します
シナリオの進行状況を保存します
保存された進行状況を再開します
ゲームを終了します
シナリオを開始すると育成画面になります。
育成画面は1画面だけではなく左右画面端をクリックすると切り替えることができます。
プレイヤーが操作するのは、画面上部メニューバーにあるコマンドと、画面左下に表示される各妖精への個別コマンドです。
メニューバー右端には現在のシナリオの名前が表示されます。
SYSTEM
CONFIG | マウススピード等、ゲーム環境の設定を変更します。 |
HELP | シナリオの目的を確認します。 |
EXIT | シナリオ選択画面に戻ります。 |
CONTROL
SETTING | セッティング画面へ移行します。 |
CARD | カード画面へ移行します。 |
NAME DISPLAY | 画面内にいる妖精の名前を表示します。 |
CARE
MUSIC | 妖精達に音楽を聴かせます。 |
TEMPERATURE | 薄明界の気温、水温を設定します。 |
CONDITION | 現在の妖精達の状態を確認します。 |
TEMPERATURE
Air Temp.が気温、Water Temp.が水温の設定になります。
それぞれの◀▶ボタンをクリックすることで数値を変更できます。
気温、水温ともに0度から40度の間で設定できます。
現在の設定温度はそれぞれのカウンターに数値として表示されます。
妖精達の適温は個体差がありますが大体人間と同じくらいです。
温度の設定が妖精達の体質に合わないと、
妖精達の機嫌が悪くなったり、最悪の場合、妖精達が死んでしまう可能性もあります。
現在の設定に対する妖精達の反応はCONDITIONで確認できます。
MUSIC
妖精達に音楽を聴かせます。一度選択すると一定時間選択できなくなります。
曲が鳴っている間さまざまな効果を発揮します。
SHOT | 火、竜巻、渦巻きを出させます。 |
QUEST | アイテム等の探索を促します。 |
FLY HIGH | 飛ぶ、泳ぐ、踊る等の行動を促します。 |
RELAX | 妖精達に休憩をさせます。 |
画面内にいる妖精を左クリックすることで、その妖精に対して個別コマンドを使用できます。
コマンドの一番上にその妖精の名前が表示されます。
GO | 妖精を移動させます。コマンド選択後、画面内をクリックすることで移動先を決定します。
妖精達はわがままですから素直に来るとは限りません。 |
LESSON | 妖精達に石版を与えます。
石版の種類によって対応した能力値がアップします。 |
GIVE | 妖精達にアイテムを与えます。アイテムによって様々な効果があります。
アイテムは妖精達が見つけることで増えます。
最大5個まで所持できますが、シナリオクリア時に次のシナリオに持ち越す事は出来ません。 |
SLEEP | 妖精を休眠させます。
休眠すると育成画面から消えてしまい、一度休眠した妖精は二度と復活できません。 |
画面右下には現在選択している妖精のパラメータが表示されます。各値の意味は後述。
左のメーターは気温計。
中央のメーターはエネルギーゲージ。育成画面内の妖精達のトータルの力を示します。
右のメーターは水温計。
左のランプは進化計。妖精の進化時に点滅します。
中央のカウンターはタイムカウンター。シナリオの経過時間を示します。
右のランプは退化計。妖精の退化時に点滅します。
SETTING
SETTINGは、育成画面の中に植物を配置するためのコマンドです。
植物図鑑は、右下の少しめくれた部分をクリックすることでページをめくることができます。
めくれた部分はページを戻し、めくれた部分の下側はページを送ります。これらはカーソルの変化
で区別が付きます。
本に書かれた植物のイラストをクリックすると、説明が表示され、画面上部のプレビュー画面でその植物の配置ができます。
マウスを操作し、配置場所を指定、左クリックすることでそこに配置します。右クリックすると配置をキャンセルします。
プレビュー画面に配置されている植物を左クリックすると、その植物を撤去することができます。
プレビュー画面左右の
をクリックすると、プレビュー画面を切り替えることができます。
画面右上の「残り」表示は、配置・撤去のできる残りの回数です。
左上のメーターは、マップ内の火(Fire)、水(Aqua)、風(Wind)の精霊力を表しています。
このメーターが長いほど妖精達に影響を与えます。
画面右下の「EXIT」をクリックすることでSETTINGを終え、育成画面に戻ります。
妖精達の感情、状態
妖精達には機嫌の善し悪しがあります。
石版を何度も連続で与えたり、現在の設定温度や環境が体質に合っていないと機嫌を損ねます。
機嫌が悪くなるとケンカをしやすくなります。妖精達の状態は頭の上に出てくるマークで見分けます。
| ? | なにか考えごとをしているようです。 |
| 音符 | なにか良い事でもあったようです。 |
| 電球 | 石版を与えた時のリアクションで、何かひらめいたようです。 |
! | ! | ピンと来る事があったようです。 |
| 赤い煙 | どうも何かが気に入らなかったようです。 |
| くるくる | やられたーって感じのようです。 |
| ドクロ | この妖精は「JOKER」であるという事を示しています。 |
| 汗 | 何か困ったことがあったようです。 |
| 石版 | 石版を与えると表示されます。 |
| アイテム | アイテムを見つけたようです。
プレイヤーがアイテムを与えても表示されます。アイテムによってグラフィックが変わります。 |
アイテム
| ホオズキ | 中身を火の妖精が食べます。 |
| フルオライト | 蛍石の事です。火の妖精が好みます。 |
| マラカイト | 孔雀石の事です。風の妖精が好みます。 |
| ラピスラズリ | 瑠璃の事です。水の妖精が好みます。 |
| 琥珀 | 三妖精にとってキャンディーです。 |
| リュウゼツラン | この葉を食べると怪我の治りが早くなります。 |
| シシガシラ | 葉にくるまっていると情緒が安定します。 |
| ガマの花粉 | 滋養強壮になります。 |
カード画面
カード画面はシナリオ選択画面、又はゲーム画面で「CARD」を選択すると表示されます。
育成による妖精の成長はカードとして記録され、この画面でそのカードを確認できます。
右側のカードをクリックすることで左にカードが表示されます。
「Fire」「Aqua」「Wind」で三妖精の切り替え、「Level」でレベルの切り替えができます。
「EXIT」をクリックすることでカード画面を終了します。
ゲームスタート時とカードが一定数に増えた場合、「ユーザー用のカードファイルを新規に作成します」と表示され、
約2MBのカードファイルを作成します。カードファイルは最大4つまで作成します。
新規作成には非常に時間がかかる場合があります。
4つのカードファイルが全て作成された場合、ゲーム本体も含めて最大で約20MBの容量が必要となるので注意してください。
カードファイルを作成するためのハードディスクの空き容量が足りないと、新規のカードが作成できなくなります。
妖精のパラメータ
FIRE | 火の精霊力の数値です。これが高いと火の妖精になります。 |
AQUA | 水の精霊力の数値です。これが高いと水の妖精になります。 |
WIND | 風の精霊力の数値です。これが高いと風の妖精になります。 |
INT | 妖精の知力の値です。アイテムを探す能力に関係しています。 |
FORC | 腕力の値です。ケンカの強さに関係します。 |
APP | 魅力の値です。 |
BODY | 体力の値です。この値が0になると妖精は死亡してしまいます。 |
MET | メタモルフォーゼの値です。この値が上昇すると妖精のレベルがアップします。 |
妖精本体にはレベルが、INT、FORC、APP、BODYの値にはそれぞれ段階があります。
段階は表示されるIDで知ることができます。
妖精のIDには以下の意味があり、このIDを基にカードは作成されます。
左から、
1桁目 | F:FIRE A:AQUA W:WIND 妖精の属性の識別です。 |
2桁目 | 妖精のレベルです。4はJOKERを意味します。 |
3桁目 | INTの段階です。 |
4桁目 | FORCの段階です。 |
5桁目 | APPの段階です。 |
6桁目 | BODYの段階です。 |
その他
妖精
妖精には火、水、風の三種類がいます。
それぞれ適正温度、生活環境、行動、能力に違いがあります。
妖精は育成画面内に最大5体まで共存できます。
JOKER 邪妖精
妖精にはJOKERと呼ばれる突然変異体がいます。
妖精達は皆わがままで、なかなか思い通りにはなりませんが、
突然変異体であるJOKERはプレイヤーの言う事を一切聞いてくれません。
妖精の持つ精霊力がある一定の基準を越えるとJOKERになってしまいます。
JOKERはイレギュラー的な存在ですので他の妖精達とは相いれない存在です。
JOKER達は争いを好みます。
幼体
妖精は幼体と言う形態をとります。幼体とは妖精が成体になる過程でとる姿です。
精霊力の値によって幼体が成体になった時になる姿が変わります。
レベル
妖精は妖精本体の成長レベルと体の各部位の段階を持っています。
各部位によってカード上の外見が変化していきます。
妖精の特殊行動
妖精達は以下の行動を取ることがあります。
・ケンカ
・火、竜巻、渦巻きを出す
・空を飛ぶ、水の中を泳ぐ、踊る
・子供をつくる
植物
植物は育成画面内の精霊力を変化させる働きを持っています。
育成画面内の精霊力がアップするという事はその属性を持った妖精が育ち易いという事です。
精霊力はセッティング画面左上のメーターでチェックできます。
各植物がどの精霊力に影響を与えるか、植物図鑑の説明をよく読んで配置してください。
妖精を元気に育てるためには
ゲーム中、妖精が突然画面内からいなくなってしまうことがあります。
これは妖精が死亡してしまったと言う事です。
妖精が死亡してしまうのは「BODY」の値が「0」になった時です。
「BODY」の値が減少するのは、
1・気温(水温)や、環境が妖精の体質にあっていない時。
2・妖精同士でケンカをした時、あるいはそれに巻き込まれた時。
3・妖精達の出す火や竜巻、渦巻きに当たった時。
などが考えられます。対処方法は、
1・妖精にあった環境作りをする事。
2・妖精達の機嫌を損ねない事。
3・危ないところには近づけない事。
などです。
特にケンカについて「JOKER」はプレイヤーの言う事を一切受け付けないので、
なるべく「JOKER」を作らないようにするか、もし出来てしまったも近づけないことです。
エネルギーゲージ
育成画面中央のエネルギーゲージは、現在育成画面内にいる妖精達のトータルの力を示します。
このゲージは、育成画面内の妖精達が成体で、火・竜巻・渦巻きを出している、
水の中を泳いでいる、空を飛んでいるなど活発に行動している時に上昇します。
逆に、妖精達が全て幼体でいる時が最も低い状態になります。
ストーリー
人類が宇宙の星々に新たな移住先を求めて「フロンティア」と呼ばれる宇宙飛行士たちを送り出した時代のこと…
フロンティアの中に「奇跡を呼ぶ人」と称えられる者がいた。
この宇宙飛行士は訓練学生時代から優秀な成績を修め、
宇宙に出てからは最年少のチーフとして二十ある探査隊のうちのひとつを任されていた。
彼が率いる隊は、地球時間で二年の間に可能性のある星を六つ発見して探査し、
そのうち四つの星へ植樹に成功して、人類が生活できる環境に整えるための第一歩を標した。
他の隊の成果は、星を二つ発見している程度で、植樹に成功した隊はない。
最年少のチーフの異例の快挙には誰もが目をみはった。
「奇跡を呼ぶ人」が地球に帰還したのは、彼が七番目の星を発見してすぐのことだった。
植樹はされず、理由も公表されないまま帰還してきたのだが、
およそ三年ぶりに地球の大地を踏んだチーフを待っていたのは熱狂的な祝賀の催しの数々だった。
しかし彼は、パレードもパーティも他の隊員たちに任せて騒ぎをかわし、姿を隠してしまった。
密かに故郷へと戻った彼は、両親や兄弟たちにも会わず街外れの丘陵にある森へと急いだ。
幼い頃から慣れ親しんだ森だった。生い茂る葉を通って差し込む陽の光が、緑色の空間を作り出している。
彼は息衝く緑に囲まれるこの森が大好きで、同じ空間を別の星にも現出させたいと望んでフロンティアになったのだった。
実はチーフの成功の秘密は、この森にあった。
森の奥には一軒の小屋があり、森の所有者でこの辺りの大地主の家系にあたる老婆が暮らしていた。
彼女の家族は街にある立派な屋敷に住んでいたのだが、彼女はチーフが子供の頃から小屋にいることが多かった。
森で遊んでいた彼は、不思議なものたちとよく出会い、それがなんなのか老婆に聞いたものだった。
老婆の口からは涸れることのない湧き水のようにさまざまな話が溢れた。
木にも大地にも水にも風にも火にも精霊が宿り、森は妖精たちの遊び場だと言うのだ。
彼は自分が見たものは妖精だと信じ、そしていつしか背中に蝶の翅に似たものを持った一人の「小さな人」と遊ぶようになった。
やがて学校の勉強に時間を取られ、森から足が遠のいてしまい「小さな人」と会えなくなったが、忘れたことはなかった。
宇宙へ出て、星を探すようになってからは必ずこの森のこと、「小さな人」のことを思い浮かべて心の内で尋ねていた。
生命を豊穣に育てる精霊たちがいる星はどこかと。
すると一種の「勘」が働くかのように、素晴らしい星が発見できた。
そこで彼はまた尋ねる。この星の精霊たちは人類と共存してくれるか、否か。
センサーが示す数字やコンピューターが弾き出す予測なども、
もちろん考慮したが星に降りるかどうかの最終決断は心に響く「小さな人」の答えで下した。
それが、チーフの「誰にも言わない」成功の秘訣だった。
いま、彼の足は森の奥へ、小屋にまだ老婆がいることを願って急いでいた。
老婆に教えてもらいたいことが起きたからだった。彼女に会うために、地球へ戻ったのだ。
それは七番目の星の探査をした時の事だった。
月ほどの大きさの星に送ったセンサーは、地球と環境が近いことを示す数字を伝えてきた。
大気もあり、水もあり、地表には森林帯もある。今まで見てきたどの星よりも理想に適った環境だ。
すぐにでも移住できると地球に知らせたいと、隊員たちは心を躍らせてチーフの命令を待った。
ところが、彼は押し黙ったままだった。何もかもがOKなはずなのに、心の内で「小さな人」は何も答えてくれないのだ。
そこでチーフは、作業ロボットを使って一本の樫の苗木を森林地帯の端の草原に植えさせた。
しかし、驚いたことに樫の木はまるで進行の速い病気にかかったように短時間で萎え、枯れて、しまいにはグズグズに崩れてしまった。
他の木や花で試しても昆虫類を放っても結果は同じだった。なにが異常なのか?センサーが伝える数字からでは原因がわからなかった。
この星の精霊が地球の生命体を拒否しているのではないかとチーフは思ったが、機械はそれを数字に示すことはできない。
彼は故郷の森の老婆に解決方法を仰ぐしかないと判断し、再度この星を訪れることを誓って帰還した…
森の奥には、昔と変わらない姿の小屋があった。
そしてチーフを待っていたかのように老婆もそこにいた。しわと白髪の数を増やして。
チーフが語る異星での出来事に耳を傾けていた老婆は、すっかり話を聞き終わると、古い棚の奥から木箱を取り出した。
中には何かの装置らしい部品と、掌に載るくらいの水晶が納まっている。
彼女は机の上で手際よく組み立て始めた。
出来上がったものは、操作装置のついた箱の上に、画面を思わせる透明板をはめ込んだものだった。
老婆は画面の裏側を指さした。
「満月の晩に、ここに水晶をおいてごらん」
彼女は透明板を指し示す。
「道具と時間と方角と招く言葉を間違えなければ、ここに別世界が見えてくるよ。
薄明界といってね、妖精界と人間界との間にある世界なんだよ。
人間は、その世界に入ることも触れることも出来ないけれど、この装置を操作して妖精と話しが出来るという。
うまくいけば、優れた妖精を誕生させたり、教育することも不可能じゃないよ。
いいかい、あんたがどうしてもその星を人類の移住先にしたいのなら、この薄明界で優秀な妖精を育てて、一緒に連れていくんだね。
立派な妖精が育つまで、その星へ行ってはいけないよ。たぶん、その星で地球の生物を拒否したのは、
そこに住む妖精たちだろうから、地球の妖精の代表としてちゃんと挨拶できる妖精でなくちゃならないよ。
将来、人類がその場所に住めるかどうか、まずは妖精同士の付き合いから始まるんだよ。
なにせ、妖精たちは人間よりもずっと古い歴史を持っているんだからね…」
チーフは老婆の言葉に自分の確信を深め、詳しい説明を聞いて満月の晩を待った。
やがて訪れた満月の晩、彼の前に薄明界が現れた…
薄明界
薄明界とは、人間界と妖精界の間に存在する、薄暮のような明るさの世界である。
昔から魔法と関係が深いとされる、樫、トネリコ、サンザシに似た木々の森があり、その中心には「世界樹」を思わせる大樹がある。
その樹は天空を支えるかのような大きさのため、全体を一望することは出来ない。
そして、その樹の幹にはひとつの洞窟があり、闇色に見えるその洞窟こそ、妖精界と薄明界を繋ぐ出入り口なのである。
薄明界に住む妖精
薄明界で、大地の精霊の顕現である龍に似た巨大な虹と、風、火、水のそれぞれの精霊が接触して、三種の妖精が生まれた。
それは、地球に人類が現れるより、ずっと昔のことだった。
人間との交流が始まったのは、人間が自然に対して畏怖を覚えた頃からだ。
その頃はまだ、薄明界と人間界の境は曖昧で、三妖精たちが精霊を操って起こす様々な出来事に遭遇した人間は、
この不思議な存在を崇めたり恐れたりした。
妖精たちは関心を持たれることが嬉しくて、人間が想いを向ければすぐに姿を見せ、得意になって自分の力を発揮したものだった。
それが人間にとって恩恵になることもあったが、逆に災いとなる方が多かった。
やがて人間は妖精たちを「魔物」と考えるようになり、その拒絶する想いが障壁になって妖精たちは自由に人間界に出入りできなくなった。
妖精たちが薄明界から人間界へ姿を現すには、自然や宇宙に関心を持つ人間の強い好奇心と、それを表明する呪法が必要になった。
いま、三妖精は薄明界でひっそりと暮らしている。
人間の好奇心は薄れ、妖精たちを呼ぶ呪法も忘れられてしまったからだ。
火の精霊
●生誕起源
空を走っていた稲妻が、巨大な虹を通り抜けて一本の高木に落ちた。
木は燃え上がり、その炎の中から生まれた。
●性格
やや協調性に欠け、わがまま。
喜怒哀楽の表現はもっともストレート。単純で破壊衝動を持つ。
口より手が先。ケンカっ早いが根に持たない。
濃やかな気配りなどできない。頑固。
自分の意思をなかなか曲げない。
●身体的特徴
性格の激しさが表にあらわれたように筋肉質。
しかし動作は火焔のようにしなやかである。
●能力的特徴
火の精霊を自在に操る。発火、火力、火炎の方向など。
太鼓などの打楽器が得意。
●遊びの特徴
競争的な遊びを好む。勝敗にこだわらず、競争することに燃える。
●着衣
甲虫類の硬い翅、あるいは鉱物を薄く削ったものや金箔、銀箔なども利用。
また、リスや兎など森の小動物の皮や毛もあしらい、野性的なデザインを好む。
●食物の好み
穀物類: ヤバネムギ (ビールの原料)
木の実類: ナナカマド、ヤマブドウ、カジイチゴ、モミジイチゴ。
胡桃や栗など硬いものが好物。
キノコ類: ドクツルタケやシロタマゴテングタケなど、人間には猛毒の物。
●適正温度
暑さを好む。30度以上の気温だと機嫌が良い。
逆に20度以下になると極端に不機嫌になる。
水の精霊
●生誕起源
巨大な虹の端が湖の面に降りた時、水と光から生まれた。
●性格
穏やかな気質だが一旦怒らせるとなかなか冷めない。
寂しがり屋。泣き虫。強情。忍耐強い。
独占欲が強く、嫉妬深い。
火の妖精の単純さとは正反対。協調性に富む。
●身体的特徴
身体には鱗状の柄があり、手足の指のマタには水掻きもある。
三妖精の中では最も長身で手脚が長い。
肩幅が広く、火の妖精の筋肉質なイメージに対して骨張った印象がある。
●能力的特徴
水の精霊を自在に操る。水流の発生、水力や形態など。
水中(淡水)で自由に活動できる。
笛の名手。
●遊びの特徴
模擬的な遊びを好む。役者のように演技やモノ真似をする。
仕種や声、歌や踊りを真似て、風や火の妖精をからかう。
●着衣
水草の薄い被膜を剥がしたものや蛇の抜け殻、蛙の皮などを使用。
身体に張り付くようにぴったりとしたデザインを好む。
●食物の好み
水草類: ウキクサ、デンジソウ、ボルボックス
果実類: スイカやレモン、ライムなど果汁の多い物
キノコ類: コウタケやホウキタケなど変わった形のものを好む
●適正温度
15度以下の少し寒いぐらいの気温を好み、水温は10度以下だと最も機嫌が良い。
逆に、気温は25度、水温は20度を越えると不機嫌になる。
風の精霊
●生誕起源
翼に風を孕んで飛んでいた麗しい霊鳥が、巨大な虹を突き抜けて地上に降りた時、羽根の間から生まれた。
●性格
気紛れ。移り気。浮気症。好奇心が強くちょっと覗き趣味あり。
嘘をつく。おおぼらふき。言葉を巧みに操る。
水の妖精も火の妖精も、風の妖精の囁きにはすぐに影響され、気分を左右されてしまう。
風の妖精はそれが面白くて、よくからかう。
●身体的特徴
たおやか。華奢。昆虫類の翅や鳥の羽根などを持ち、飛翔する。
容貌は三妖精のうちで最も蠱惑的。
●能力的特徴
風の精霊を自在に操る。風の発生、風力や風向など。
空中を自由自在に飛べる。
弦楽器の演奏が得意。
●遊びの特徴
めまい的遊びを好む。キノコを食べてトリップしたり、踊りに陶酔する。
隠れんぼや鬼ごっこといった遊びで相手を幻惑するのが好き。
●着衣
花や木の葉のほか鳥の羽毛など使用。
豪奢な雰囲気、きらびやかなデザインを好む。
●食物の好み
穀物類: オートムギ (ウィスキーの原料)
果実類: リンゴ、ミカンやレモン、梅、プルーン
キノコ類: オオワライタケやシビレタケのように幻覚を起こす物
●適正温度
気温はそれほど気にしないが、20度前後の時が最も機嫌が良い。
10度以下、30度以上になると気分を害する。